私は以前一度だけ登山が好きなブラザーと富士山に登ったことがあります。富士山を登るためには、いくつかのコースがあって、初心者向けのコースから上級者向けのコースなどあるそうです。当たり前のことですが、どのコースを選んで登るにしても、山頂に向かって歩いて行くためのものです。初心者である私は、登山に慣れたブラザーと一緒に登ることで安心して無事も山頂まで行けました。
私たちの霊的生活もこれと似ています。私たちの目標はおん父との交わりですし、おん父への道を歩むことです。時には、道を外れたり、遠回りをしたり、時には険しく長い道を歩むこともあります。その中で、道案内をしてくれる方と共に歩むことが大切になってきます。それは、聖霊であったり、守護の天使であったり、イエス様であったりといろいろな方の導きとともにおん父へと歩んでいくのです。
きょうのみことばは、「主の変容」の場面です。みことばは「さて、これらのことを語られてから8日ほどたって、イエスはペトロとヨハネとヤコブを連れて、祈るために山にお登りになった。」という節から始まっています。この「8日目」とは、イエス様が「人の子は必ず多くの苦しみを受け、長老、祭司長、律法学者たちから排斥され殺され、そして3日目に復活する」(ルカ9・22)と、弟子たちに話された時から数えての日数です。
ちなみに、他の共観福音書では、「6日目」となっていますが、ルカだけが「8日目」となっています。もしかしたら、ルカ福音書は、イエス様の【ご受難と復活】を黙想する期間を長くしたのかもしれません。弟子たちは、イエス様がどのような最期を迎えるかという話を聞いて、かなり動揺したことでしょうし、その後のご自分に従う者とはどういうことかを話され、「弟子として、メシアであるイエス様に従うこと」とはどういうことなのかと真剣に考えたのではないでしょうか。このことは、私たちがイエス様に従って歩む中で、自分を振り返って見つめ直す時間を持つことの大切を教えてくれているのかもしれませ。
イエス様が山に登られた理由は、ご自分の最期について【祈るため】でした。イエス様は、ご受難の間際でもオリーブ山に登られて「父よ、お望みなら、この杯をわたしから取りのぞけてください。」(ルカ22・42)と祈られています。聖書の中で【山】は、日常の生活と離れた神聖な場所として表されています。イエス様は、大切なことなさる前には、必ず山でおん父に祈られます。
イエス様が祈っておられると、顔の様子が変わり、衣は真っ白に輝きます。このイエス様の顔の様子が変わったというのは、神の子としての内面の輝きであり、おん父との深い祈りと交わりの表れと言ってもいいのかもしれません。私がある年の「年の黙想」を終えた時、ある方から「あら、ブラザーのお顔が輝いて見える」と言われたことがあります。もしかしたら、私自身気づかない何かの変化があったのかもしれませんが、その方はその変化を感じたのでしょう。
さて、イエス様が祈られていた所にモーセとエリアが現れ、エルサレムで成し遂げようとすることについて話されます。この2人とは、律法を代表するモーセと預言者を代表するエリアということで、聖書全体を表しているようです。ですから、イエス様がメシアとして、旧約聖書に書かれたことが成就することについて語られていたのではないでしょうか。
しかし、この素晴らしい場面で弟子たちは、眠くてたまりませんでした。みことばには、「ペトロとほかの2人は、ひどく眠かった。それでも目を覚ましていると……」とあります。イエス様のオリーブ山での祈りの時には、弟子たちは眠っていました(ルカ22・45参照)。なぜ、弟子たちはイエス様が祈られていたときに、眠たくなったのでしょう。もしかしたら、おん父の業なのかもしれません。旧約聖書の中でおん父は、アダムであったり、アブラムであったり、ヘロデであったりと人を深い眠りに陥れせる場面があります。このことは、おん父の【神秘】と言ってもいいでしょう。
ペトロは、目を覚ましてイエス様と2人の姿を見ます。ペトロは、その栄光に包まれた時間と空間が心地よかったのでしょう。それで、2人がイエス様から離れようとしたときに、「先生、わたしたちがここにいるのは、素晴らしいことです。……」と言といいます。しかし、その時に、雲が彼らを覆い、雲に包まれ、雲の中から「これはわたしの子、選ばれた者。彼に聞け」という声がします。そして、彼らがこの声を聞いた時には、イエス様だけがそこにおられたのです。
この「彼に聞け」という言葉は、私たちがおん父への道を歩むためには、イエス様の声を聞かなければ歩むことができない、と示しているのでしょう。私たちがイエス様の声を聞くためには、まず、イエス様の方に耳を傾ける必要があります。私たちは、日々の生活の中でイエス様を感じ、イエス様の声に耳を傾けることができますように、祈ることができたらいいですね。