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ローマ:聖年企画「競争から協力へ」—— 若者とメディアの対話シンポジウム

 2025年1月25日、ローマにて「都市との対話:文化的・精神的な交流の集い」が開催されました。本シンポジウムは、聖パウロ修道会と聖パウロ女子修道会が主催し、若者やジャーナリスト、メディア関係者、教育者など、多様な立場の人々が一堂に会しました。今回のテーマは「競争から協力へ——若者とメディア、対立を超えて希望をはぐくむには」。現代社会におけるメディアの役割や課題、そしてその可能性について深く議論する場となりました。

開会の挨拶と問題提起
 会場はローマの使徒の女王の聖堂を中心に行われました。冒頭では、聖パウロ修道会の総長であるドメニコ・ソリマン神父が挨拶し、「私たちの使命は『福音のコミュニケーション』を通じて希望を伝えることにある」と強調しました。特に、デジタル時代において、従来の手法にとどまるのではなく、新たなコミュニケーションの在り方を模索することが重要であると述べました。また、聖パウロ女子修道会のシスターたちは、現代メディアが紛争地域や苦境にある人々とどのように連帯できるのかを問いかけました。情報の拡散が容易になった一方で、誤報や憎悪の拡散、暴力的なコンテンツの氾濫といったリスクがあることも指摘されました。

若者の声とパネルディスカッション

 続くパネル・ディスカッションでは、多様なバックグラウンドを持つ登壇者が意見を交わしました。若者の代表として、中高生や大学生、さらには社会人が登壇し、次のような率直な問いかけをしました。

・「SNSやオンライン空間は、私たち若者にとって居場所であり、エンターテインメントの場でもありますが、一方で誤情報やヘイトスピーチにさらされるリスクもあります。これを競争や対立の道具ではなく、建設的な議論や協力の手段に変えるにはどうしたらよいのでしょうか?」
・「紛争地域の若者が、暴力や憎悪の連鎖を断ち切り、メディアを平和構築のために活用するためには、どのようなスキルが求められるのでしょうか?」

 これらの質問を受け、登壇者たちはSNSの持つ二面性について議論しました。特に、フェイクニュース(誤報)が拡散されやすい構造や、子どもたちが有害コンテンツに触れやすい現状が問題視されました。その一方で、SNSは新たな公共空間となり得る可能性も秘めており、価値ある情報や物語を伝える「ナラティブ(語り)」の力が重要であるとの指摘がありました。特に、単なる問題提起にとどまらず、困難を乗り越えた人々の実例や和平・和解のプロセスを可視化することが、希望を生み出す鍵となるという意見が出されました。

デジタル時代の平和構築と教育の役割
 ジョージア、コロンビア、マリなど、紛争や情勢不安を抱える国からの若者たちも登壇し、SNSが国家のプロパガンダに利用される現状を指摘しました。しかし、同時にデジタル技術が国境を越えて文化や痛みを共有する手段にもなり得ることに期待を寄せています。ある登壇者はこう語りました。

 「SNSを通じて敵とされてきた相手を知ることができれば、誤解や憎悪を和らげることができるかもしれません。しかし、それには批判的思考を持ち、実際に対話し学ぶプロセスが不可欠です。さもなければ、SNSは単なる対立の場になってしまうでしょう。」

 このような現実を受け、登壇者たちは「オンラインとオフラインの分断を避けることの重要性」を強調しました。SNS上での言葉や行動には現実社会と同じ責任が伴うことを理解し、教育の現場や家庭において、ネットリテラシーと共感力を育むことが必要であるとの認識が共有されました。また、大人自身が適切なネット利用の手本を示すことが求められていることも指摘されました。

新たなアプローチ:希望を生み出すメディアの活用法
 パネルの終盤では、具体的な対策やアプローチについても議論が交わされました。特に、以下の点が挙げられました。

1.ファクトチェックの強化とメディアリテラシーの教育
 情報の信頼性を確保するための仕組みを整える
 SNSを利用する際の批判的思考を育む教育を推進する
2.ストーリーテリングの活用
 希望を生むナラティブ(語り)を重視し、和解や平和構築の事例を伝える
 特に、紛争や困難を乗り越えた人々の証言を可視化する
3.デジタルとリアルの融合
 オンラインだけでなく、実際の場での対話や協力を促進する
 デジタルツールを活用しながらも、人と人との直接的なつながりを大切にする

シンポジウムの締めくくり
 約90分に及ぶ活発な意見交換の後、パウロ家族メンバーによる祈りと、創立者アルベリオーネ神父の墓前での祈りが行われました。シンポジウムを通じて共通していたのは、「メディアは分断を生むだけでなく、希望を創出する手段ともなり得る」という確信でした。SNSには競争や対立を助長する側面がありますが、適切な使い方をすれば、真の協力関係や連帯を生み出すことができます。

 「可能性を諦めず、自ら率先して動く」—— それこそが、現代の若者に求められる姿勢である。

 シンポジウムの議論を通じて、その力強いメッセージが改めて浮かび上がりました。

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大西德明神父

聖パウロ修道会司祭。愛媛県松山市出身の末っ子。子供の頃から“甘え上手”を武器に、電車や飛行機の座席は常に窓際をキープ。焼肉では自分で肉を焼いたことがなく、釣りに行けばお兄ちゃんが餌をつけてくれるのが当たり前。そんな末っ子魂を持ちながら、神の道を歩む毎日。趣味はメダカの世話。祈りと奉仕を大切にしつつ、神の愛を受け取り、メダカたちにも愛を注ぐ日々を楽しんでいる。

  1. ローマ:聖年企画「競争から協力へ」—— 若者とメディアの対話シンポジウム

  2. ブラジル:終生誓願のための修養会が行われました

  3. コロンビア:祭壇奉仕者・朗読奉仕者の任命式がありました

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