*叙階は、キリストから使徒たちにゆだねられた使命を世の終わりまで教会において続けさせる秘跡、つまり使徒の奉仕職の秘跡です。これには、司教、司祭、助祭の三つの位階があります。
1 叙階(Ordo)という秘跡の名称の由来
*Ordo(位階・団体)の語は、古代ローマでは市民社会の法的団体、特に統治者たちの団体を意味しており、Ordinatio(叙階)は一つのordo(位階)への加入を意味します。聖伝によると、教会には古い時代から、聖書に基づいたギリシア語では「タクセイス」、ラテン語ではordinesと呼ばれる団体がありました。
この伝統に基づいて、典礼では
Ordo episcopolum(司教団)
Ordo presbyteterorum(司祭団)
Ordo diaconorum(助祭団)
という用語を使っています。他の団体、たとえば、洗礼志願者、おとめ、夫婦、寡婦などのordo(団体)もありました。
*教会のこうした団体に加入するために、ordinatio(団体加入式)と呼ばれる式が行われていました。この式は宗教的典礼行為であって、聖別、祝福、秘跡などと呼ばれていました。今日では、ordinatio(叙階)の語は司教、司祭、助祭の団体に加入される秘跡的行為のためだけに用いられており、共同体による単なる選挙、指名、委任ないし任命以上の意味合いが込められています。なぜなら、聖なる権能を行使させ、教会を通してキリストだけが与えることができる聖霊のたまものを授けるからです。叙階はまた、聖別(consacratio)とも呼ばれます。それは、キリストご自身によって教会のために選別され、叙任されるものだからです。聖別の祈りを伴う司教の按手が、この聖別の見えるしるしとなっています。
2 救いの営みにおける叙階の秘跡
➀旧約の祭司職
*選ばれた民は、神によって「祭司の王国、聖なる国民」とされました。しかし、イスラエルの民の内部でも、神は十二部族の一つであるレビ族をえらび、他の部族とは区別して、典礼の務めにあたらせました。神ご自身がこの嗣業です。旧約の祭司職を開始する際には特別な聖別式がありました。祭司たちは「罪のための供え物やいけにえをささげるよう、人々のために神に仕える職に任命されています」。
②キリストの唯一の祭司職
*旧約の祭司職のすべての前表は、「神と人との間の唯一の仲介者」であるキリスト・イエスのうちに実現されました。「いと高き神の祭司」メルキセデクは、キリスト教の伝承ではキリストの祭司職の前表と考えられてきました。キリストは「メルキセデクと同じような大祭司」であり、「聖であり、罪なく、汚れなく」、しかも「唯一のささげものによって」、すなわち、十字架上の唯一のいけにえによって、「聖なる者とされた人たちを永遠に完全な者となさった」かたです。
③キリストの唯一の祭司職への二通りへの参加
*大祭司であり唯一の仲介者であるキリストは、教会を「父である神に仕える祭司の王国」となさいました。信者の全共同体がそれ自体として祭司的共同体です。信者は祭司、預言者、王であるキリストの使命にそれぞれの召し出しに応じて参与し、洗礼による祭司職を果たします。信者は洗礼および堅信の秘跡によって「聖なる祭司職を持つ者となるよう聖別されます」。
*司教および司祭の職位的、位階的祭司職とすべての信者の共通祭司職とは、「それぞれ独自の方法で、キリストの唯一の祭司職に参与して」おり、「相互に秩序づけられ」ながらも、本質的に異なるものです。信者の共通祭司職は洗礼の恵みから発出する、信仰・希望・愛の生活、霊による生活の中で実現されるものですが、職位的祭司職は共通祭司職に奉仕し、すべてのキリスト者の洗礼の恵みの展開を助けるものであり、キリストがたえずご自分の教会を築き導くために用いられる手段の一つです。そのために、職位的祭司職は、固有の秘跡、つまり叙階の秘跡によって受け継がれるのです。