「イエスは、ヘロデ王の時代にユダヤのベツレヘムでお生まれになった」(マタイ2・1)ということばから始まります。「ベツレヘム」とは、ヘブライ語で「パンの家」を意味し、ダビデ王の出身地として有名な所です(一サム16章、20・6参照)。ここでわざわざ「ユダヤ」を入れているのは、ガリラヤにあるゼブルン族のベツレヘム(ヨシ19・15)と区別するためでしょう。
ベツレヘムで誕生したイエスを拝みに、占星術の学者たちが東方からやってきます。「占星術の学者」とは、ギリシア語で「マーゴイ」が使われ、「博士」「占い、医術を行っていた学者」などを意味しています。また彼らは本来、ペルシアの祭司で、天文学、薬学、占星術、魔術、夢解釈をよく行い、人の運命や世の動きについて神意を伝える人々、多くの人々から尊敬されていました。後の時代になると「マーゴイ(magoi)」は西方の世界で「魔術師」を意味するようになり、「マジシャン」などもその部類に入るでしょう。
東方でとても尊敬されていた外国人の占星術の学者たちが、幼子イエスの前にひれ伏して拝みます(2・11)。イエスの活動が異邦人のためであることを強調するマタイ福音書において、幼子イエスを最初に礼拝した人たちが外国人(異邦人)であったことを強調します。こうした内容は、その後も「神の国はあなたたちから取り上げられ、それにふさわしい実を結ぶ民族に与えられる」(マタイ21・43)と語ることにより、神の国が異邦人に与えられることを示していきます。このような姿勢に対応するのは、祭司長やファリサイ派の人々(マタイ21・45)でした。
主の公現の出来事を通して、救いの広がり、また異邦人に及ぶ救いの豊かさを感じることができるのではないでしょうか。