序)堅信の秘跡は、洗礼および聖体と一緒に組み合わされて、「キリスト教入信の秘跡」を構成します。この三つは一体です。そのため、堅信の秘跡が洗礼の恵みの完成に必要であることを説明しなければなりません。「堅信の秘跡によって信者はいっそう完全に教会に結合され、聖霊の特別な力で強められて、キリストの真の証人としてことばと行いをもって信仰を広めかつ擁護するよう、いっそう強く義務付けられます」。
1 堅信とは?
*旧約時代の預言者たちは、待望のメシアが救いの使命を実現するために、主の霊がその上にとどまると告げていました。イエスがヨハネから洗礼を受けられたとき、その上に聖霊がくだったことは、イエスが来るべきかた、メシア、神の子であることのしるしでした。
*聖霊の充満はただメシアに限らず、メシアに属するすべての民に与えられるはずのものでした。キリストは幾度かこの聖霊の到来を約束なさいましたが、それはまず復活の日に、ついで、いっそう目立つ方法で聖霊降臨の日に実現されました。聖霊に満たされた使徒たちは「神の偉大な業」を宣言し始め、ペトロは聖霊が注がれたことはメシア時代のしるしであると宣言しました。そのとき、使徒の説教を信じて洗礼を受けた人々も聖霊のたまものを受けました。
*このころから使徒たちは、キリストの意向に従って、霊のたまものを、洗礼の恵みを完成するものとして、按手をもって新信者に与えました。按手はカトリックの伝承によって、聖霊降臨の恵みを、ある意味で教会の中に永続させるものであるところの堅信の秘跡の起源とみなされています。
*きわめて早い時代から、聖霊のたまものが与えられることをいっそうよく表すために、按手に香油の塗布が付け加えられました。この塗油は、「キリスト者」という名称の意味をよく示しています。それは「油注がれたもの」という意味があります。
*この塗油の儀式は、今日まで、東方教会にも西方教会にも存在します。この秘跡は、東方教会では、聖香油の注ぎ(Chrismatio)ないし聖香油の塗布、もしくは「香油」を意味するミュロンと呼ばれています。西方教会における堅信(confirimatio)という呼称は、この秘跡が洗礼をより堅固なものとすると同時にその恵みをさらに強化する、ということを表しています。
2 堅信のしるし
*堅信式では、塗油のしるしと、その塗油によって示し刻み付けられる霊印について考えなければなりません。
*塗油は、聖書を含めて、古い時代から多くの象徴的な意味を持つものとされてきました。油は豊かさ、喜びのしるしで、清め、柔軟さ、打ち身や傷の痛みを和らげる治癒のしるしでもあり、美と健康と力を増進させるものです。
*塗油の意味
①洗礼前の求道者への塗油は、清めと強化を意味します。
②病者の塗油は治癒と力の回復を意味します。
③洗礼後の堅信および叙階で受ける聖香油は一種の聖別のしるしです。
*堅信による塗油を受けたキリスト者は、イエス・キリストの使命とイエス・キリストに充満する聖霊の働きとにいっそう深くあずかり、その生活全体がキリストのよい香りを放つようになります。
*受堅者はこの塗油によって聖霊の刻印を受けます。証印は本人の象徴、その権威のしるし、ある物に対する所有権のしるしです。そのために昔は、兵士には指揮者の、奴隷には主人の印が押されました。証印は法的行為や文書を真正なものとし、場合によってはそれを秘密のものともします。
*キリスト者もある種の証印を押されています。聖パウロが次のように語ります。「私たちとあなたがたとをキリストに固く結びつけ、私たちに油を注いでくださったのは、神です。神はまた、私たちに証印を押して、保証として私たちの心に<霊>を与えてくださいました。」(二コリ1・21~22)