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カトリック入門

「カトリック入門」 第91回 黒島天主堂【動画で学ぶ】※レジュメ字幕付き

 平戸市の郊外にかわち川内峠(標高約一九〇m)がある。阿蘇の草千里とまではいかないが、とてもきれいな草原で、頂上にたどり着くと、北側に壱岐や呼子の沖合にあるま馬だら渡島、西側にいき生つき月や殉教地としても有名ななか中え江ノ島、東側には田平教会や私の郷里・み御くりや厨、南側にはくじゅうく九十九しま島や黒島を望むことができる。川内峠の頂上から見た黒島は、潜伏キリシタン時代の交通手段が船だったことが想像できる。黒島の向こう側にあるそと外め海や五島から黒島へ移住し、それから大村、佐世保、田平、平戸、御厨へ移住していったことがいち一もく目りょう瞭ぜん然。
黒島の顔と言えば、黒島教会になるだろう。一体、どんな経緯でこの教会が建てられたのだろうか? 『長崎遊学 2 長崎・天草の教会と巡礼地完全ガイド』(長崎文献社発行)には次のように記されている。
 「黒島は、佐世保の九十九島の中の最大の島。平戸藩がキリシタンに対して比較的寛容だったので、そと外め海、いき生つき月、五島などから多くのキリシタンが移住し、潜伏していた。げん元じ治二(一八六五)年の信徒発見の二か月後、黒島から、二十人の総代が大浦天主堂のプチジャン神父を訪ね、次にポワリエ神父が黒島を訪れて、総代の一人・出口大吉の家で、黒島最初のミサが行われた。そして禁教令が解かれる以前に、潜伏キリシタンの島から、カトリック信者の島へと変貌し、黒島以外への伝道活動も行われるようになる。明治十一(一八七八)年、平戸島のひも紐さし差(当時はた田さき崎)の巡回地となり、翌年、黒島を巡回したペルー神父により、名切に最初の教会が木造で建てられた。さらに明治十三(一八八〇)年、『女部屋』と呼ばれる修道会『黒島あい愛く苦会』を設立。旧馬込教会を建てたマルマン神父が、明治三十(一八九七)年、黒島に赴任すると、煉瓦造の聖堂の設計を行い、建設が開始される。しかし煉瓦が祭壇の上まで積み上げられたとき、予算を大幅に超過し、工事は中断。その後、費用を捻出して、明治三十五(一九〇二)年に完成させた」(42頁)とある。黒島教会が建てられるまでには、相当の苦労があったと思われる。
 黒島港から教会へは上り坂になるが、約25分の歩程。登り切った所から教会が見え、四角の鐘塔、バラ窓を持つ堂々とした建物である。教会の煉瓦は、教会下にある「名切の浜」まで運ばれ、信者たちが教会まで運び込んだものである。煉瓦一つひとつに信者たちの信仰が感じられる。教会の中に入ると、リブ・ヴォールド(コウモリ天井)で、ステンドグラスを通して入ってくる光はとても柔らかい。祭壇は黒島産のみ御かげ影石が使われ、内陣には有田産のタイルが敷かれている。教会の中に入って興味深いのは、壁板の木目がニスで描かれていることだ。資金不足もあったが、それを解消するための知恵とも言えよう。
 教会を後にして、次に訪れたらよい所は、島の東側にある「信仰復活之地」。直接歩いて行けば、25分くらいだが、ね根や谷にある大サザンカ・アコウの巨木の所を通って行くと、50分ほどかかる。市指定天然記念物にもなっているので、少々時間がかかっても、こちらのルートがお勧め。しかも樹齢数百年の巨木で、外海から移住したキリシタンが生活に必要な油を採るために持ち込んだと言われる。根谷を通って行くと、やがてひ日かず数に到着する。私事になるが、父のいとこが嫁いでいる所でもあり、(黒島には)親類縁者がけっこういる。この近くに「信仰復活之地」があり、先ほどの説明にもあるように、黒島で最初にミサがささげられた場所でもある。記念碑とともに、右手には聖母像がさりげなく置かれ、生活に密着した信仰が感じられる。
 いったん黒島教会に戻り、今度は西側を歩いてみよう。教会から歩いて五分の所にカトリック共同墓地がある。そこには山内家の先祖代々のお墓、教会建築に尽力したマルマン神父のお墓もある。さらに西側へ歩いて行くと、き喜く久や屋旅館、つるさきショップ・民宿、Cafeみ海さき咲と続く。これらの店は信者さんたちが経営していて、家の中には聖画やマリア像などが置かれている。食事時の刺身や煮魚などは、地元で獲れた魚が使われているので、とてもおいしい。さらに西へ歩くと、わらべ蕨展望所がある。ここからは長崎鼻の断崖絶壁や西その彼ぎ杵半島を望むこともできる。さらに西へ25分くらい歩くと、串ノ浜岩脈に到着する。ここは長崎県でも最大規模の岩脈となっている。ただここの見学は、帰りが上り坂になるので歩く人には勇気がいる。
 黒島港へ行く途中、曹洞宗興禅寺・役所跡がある。この役所では江戸時代に踏み絵が行われた場所。私の先祖も、正月の頃になるとキリシタンに対する取り締まりを受けた所であろう。この役所跡から歩いて10分くらいで黒島港に到着する。ここには昔と違って黒島ウェルカムハウスがあり、黒島についての情報やオリジナルグッズを買い求めることもできる。
 ゆっくりとした時間の中で島を巡り、信仰・海の幸・澄んだ空気を味わうのに適した世界文化遺産と言えよう。

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