雑誌の仕事の中に、試写会があります。封切になる前の映画を鑑賞して、記事を書く仕事です。楽しそうに思えますが、けっこう時間も取られます。最近思うのは、家庭、友情、孤独、高齢者などのテーマを取り扱った作品が多いことです。今の日本の社会を反映しているのでしょう。以前、見た映画に『幸福な食卓』というのがあります。
4人家族の中原家での出来事。家族の和を作り出している娘の佐和子、生真面目な父・弘、専業主婦の母・由里子、高校の成績ではいつも優秀な兄・弘。ごく平凡な家族で、問題があれば食卓でお互いに話し合える雰囲気がありました。ところが3年前に父の弘は自殺未遂を図り、「父さんは、今日で父さんを辞めようと思う」と語ります。佐和子の始業式の朝(家族の食卓)で、突然発した意外な言葉にみんな動揺し、家族の歯車が乱れ始めます。優秀な兄は大学進学を辞めて農業を、母は家を出て一人暮らしを始め、中学3年になったばかりの佐和子は情緒不安定になります。そんな中、新学期に「大浦勉学」が転校してきます。「勉学」とユニークな名前とともに、寛大な性格。佐和子にとっては相談できるクラスメートで大きな支えにもなります。しかし、新聞配達のバイトをしていた勉学は、配達中に交通事故に遭い、即死。「死にたいと思っていた人が生き、死んでほしくない人が亡くなる」世の不条理に、佐和子は動揺が増していきます。皮肉にもこうした悲劇が、家族を再生していく原動力となっていきます。
今日の聖書のことばに「貧しい人々…、今飢えている人々…、今泣いている人々は、幸いである」と。日本の社会を見ていくと、数多くの悲しい出来事や孤独に満ちています。それは同時に、イエスの幸せのメッセージが響いてくるチャンスなのかもしれません。