毎年、「世界長者番付」が掲載されますが、アメリカ合衆国の経済誌『フォーブス』によれば、2021年4月現在で、世界第一位はアマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏(1770億ドル)、第二位は電気自動車メーカーのテスラを創業したイーロン・マスク氏(1510億ドル)。日本ではソフトバンクの孫正義氏(450億ドル)となっていて、世界長者番付では29位です。たくさんのお金持ちがいますが、そんな彼らが亡くなった後の相続遺産はどのようになるのだろうと思います。
「金持ち」について岩波書店の『国語辞典』を調べると「金をたくさん持っていること。財産家」と記され、一つの格言が追加されています。「金持、喧嘩せず」。つまり「金持ちは、けんかをすれば損をすることを知っているので、他人と争わないものだ」と。なるほど金持ちになるためには、けんかをせず、世の中を上手に渡り歩いて、上手に利益を上げていくのが大事なのかもしれません。
「金持ち」という語は、ギリシア語では「プロウジオス」という言葉が使われ、「富」「豊か」という意味があります。ある聖書辞典で「富」を調べると「人を破滅させる力を持つ」と記されています。時として、富んでいるために人生が破滅してしまうこともあります。
もう数十年前ですが、郷里(長崎県松浦市)の海岸線にボタ山がありました。やがて埋め立てられ、佐世保の造船会社がその土地を買収し、造船所を建設する予定でしたが、バブルがはじけて中止となり、しばらく更地になっていました。その後、火力発電所が建設されることになりました。
ところが火力発電所ができると水温が2~3度上昇するということで、養殖業者たちが猛烈に反対。その和解策として、養殖業者に一戸あたり約1億円の補償金が渡されることになりました。その後、養殖業者の家はとてもきれいになりましたが、隣り合わせの農家には補償金は渡されませんでした。養殖をしていないので、当然と言えば当然です。農家の方々は少々不満も感じていましたが、仕方ありません。一方、補償金をもらった家は仕事をする気力も失せたようで、だんだん没落していきました。補償金によって、人生の歯車が狂ってしまったのを目の当たりにしました。
いつの時代でも、富の危険は起こり得ます。富の誘惑に負けないようにしたいものです。