*教会は、七つの秘跡の中に、特に病気で苦しむ人々を励ますことを目指す秘跡があると信じ、そう宣言しています。すなわち、病者の塗油の秘跡です。
*「病者の聖なる塗油は、真の厳密な意味での新約の秘跡として、私たちの主イエス・キリストによって制定されました。この秘跡はマルコによる福音書にほのめかされており、主の兄弟使徒ヤコブによって信者に勧められ、公布されました。」
1 病者の秘跡について
*ラテン典礼では次のように定められています。
「病者の塗油の秘跡は重病の病人に授けられ、祝福された油―オリーブまたは他の植物油―を額と手に塗り、同時に、次のことばをただ一度唱えます。『この聖なる塗油により、慈しみ深い主キリストが、聖霊の恵みであなたを助け、罪から解放してあなたを救い、起き上がらせてくださいますように』」。
2 秘跡を受ける人、授ける人
*病者の塗油の秘跡は「危篤の状態にある人のためだけの秘跡ではありません。したがって、信者が、病気や老齢のために死の危険にある場合、この秘跡を受けるに適した時が来ていることは確かです」。
*塗油の秘跡を受けた病人が小康を得た後に再び重体に陥った場合、または、同じ病気が長引いて容態がいっそう悪化した場合、この秘跡は繰り返し授けることができます。危険な手術の前にも病者の塗油の秘跡を受けるのが望ましく、衰弱が進んだ高齢者の場合も同様です。
*司教と司祭だけが、病者の塗油を授けることができます。この秘跡の恩恵を信者に教えることは司牧者の義務です。信者はこの秘跡を受けるために司祭を呼ぶよう、病人に勧めなければなりません。病人は正しい心構えで、司牧者と教会共同体全体とに助けられながらこの秘跡を受ける準備をする必要があります。教会共同体は祈りと兄弟的思いやりとをもって、病人を特別に見守らなければなりません。
3 病者の塗油の秘跡の式次第
*病者の塗油の秘跡も共同体的典礼祭儀です。この秘跡が行われる場所が家庭であろうと、病院であろうと、聖堂であろうと、また一人の病人のためにおこなわれようと、大勢の病人のために行われようと変わりはありません。この秘跡がキリストの過越の記念である感謝の祭儀の中で行われるのは、きわめてふさわしいことです。事情によっては、秘跡が行われる前にゆるしの秘跡を行い、後に聖体の秘跡を授けることができます。聖体はキリストの過越の秘跡ですから、常にこの世の旅の最後の秘跡、永遠のいのちに「移る」ための「旅路の糧」でなければなりません。
*式は、悔い改めの祈りの後、ことばの典礼によって始まります。朗読されたキリストのことばと使徒たちのことばとは、病人と集まっている人々との信仰を目覚めさせ、キリストに聖霊の力を求めるよう促します。
*病者の塗油の式は、主に次の要素から成り立っています。「教会の長老(すなわち司祭)」が、黙ったまま病人に按手する。教会の信仰に基づき病人のために祈る。これはこの秘跡に固有なエピクレシス(聖霊の働きを願う祈り)です。引き続き司祭は、できれば、司教が祝福した油を用いて塗油を行います。
4 秘跡の効果
*この秘跡の恵みは、神への信頼と信仰とを新たにし、死に直面して落胆したり苦悩したりする気持ちを起こさせる悪魔の誘惑に抵抗する力を与える聖霊の賜物です。
*この秘跡の恵みにより、病人はキリストの受難にいっそう緊密に一致する力と賜物とを受けます。
*教会は聖徒の交わりの中で、この秘跡を行いながら病人の幸せのために執り成しますが、病人はこの秘跡の恵みによって教会の聖化とすべての人の善益とに寄与します。
*この秘跡は、死への準備でもあり、「この世を去る人々の秘跡」とも呼ばれます。
5 旅路の糧
*教会はこの世を去る人々に、病者の塗油のほかに、旅路の糧としての聖体を授けます。この聖体拝領は、永遠のいのちの種子であり、復活の力です。死んで復活されたキリストの秘跡である聖体は、このとき、死からいのち、この世から御父のもとへの過越の秘跡となるのです。
*洗礼、堅信、聖体が「キリスト教入信の秘跡」として一つであるように、ゆるしの秘跡、病者の塗油、聖体を一つにまとめ、「祖国に入る準備の秘跡」、あるいは地上の旅路を完了する秘跡と呼ばれたりします。