「働く」というのは、「『傍(はた)』を『楽(らく)』にする」ことから、【働く】となったそうです。ですから、自分だけではなく、自分と周りが【楽】にならなければならないのです。これを間違えると、自己満足に終わったり、もしくは、自分だけ無理して疲れたりしてしまいます。せっかくの【働く】が「『傍』(はた)ら『苦』(く)」となってしまうかもしれません。
きょうのみことばは、ぶどう園の主人が労働者を雇うという喩え話です。イエス様は、まず人々に「天の国は次のことに似ている」と言われます。ですから、彼らの日常の生活では計り知れない【おん父】の【み国】でのことを話そうとされています。喩え話は「ある家の主人がぶどう園で働く者を雇うために、朝早く出かけた」という言葉から始まっています。このぶどう園の主人は、おん父のことを表していると思うのですが、だとしたら、わざわざ労働者を雇わなくてもご自分の力でぶどうを収穫することができたはずです。ここで、あえて「ぶどう園で働く者を雇うために」とイエス様が言われたのは、おん父がご自分と一緒に働く【共働者】を必要とされたのではないでしょうか。
パレスチナ地方は、日中とても暑いため、朝の涼しい時間から仕事を始めるようです。みことばには書かれていませんが主人が朝早く出かけたと言うのは、「再び市場に出かけると……、主人はまた12時ごろと3時ごろ」とありますように「3時間」おきに市場に出かけられていますので、朝の6時ごろから市場に行かれたのでしょう。さらに、暑い中ぶどう園の主人が何度も市場に足を運ばれるのは、ご自分と一緒に働く人を一人でも多く望まれたからなのでしょう。
ぶどう園の主人が彼らと約束された「1デナリオン」は、当時の1日の賃金に値する額で人々にとって当たり前だったのです。主人は市場に出かけて労働者を雇うたびに「あなた方もぶどう園に行きなさい。ふさわしい賃金を払おう」と言われて彼らと約束します。人々も「ふさわしい賃金」と聞いてだいたい「1デナリオン」と気づいたことでしょう。
イエス様は、続けて「主人は、さらに5時ごろ、出かけると、ほかの人たちが立っていたので、『なぜ何もせず、1日じゅうここに立っているのか』と言うと、彼らは『誰も雇ってくれないからです』と答えた」と話されます。きっと彼らは、周りから蔑まれている【罪人】と言われている人々や、年老いた人や障がいを持った人のような、労働するのに何かしら不都合を持った人たちだったのではないでしょうか。彼らは、「1日じゅう」暑ない中、不安な気持ちで市場に立って雇ってくれる人を待っていたのです。きっとぶどう園の主人は、彼らのことを憐れに思われたのでしょう。それで、他の人と同じように「あなた方もぶどう園に行きなさい」と言われて彼らを雇われます。
夕方になったので、ぶどう園の主人は、管理人を呼び「最後に来た者たちから始めて、最初に来た者たちまで、賃金を払いなさい」と言われます。まず、5時ごろに来た者たちが来て、それぞれ1デナリオンずつ受け取ります。そして、最初に来た者たちが来て「それより多くもらえるだろうと思っていたが、彼らが受け取ったのも1デナリオン」でした。イエス様は、この最初からぶどう園で働いていた者たち対して、「それよりも多くもらえると思っていた」と言われます。それは、人間的な思いが出てしまうことをご存知だからと言ってもいいでしょう。案の定彼らは、主人に対して不平を言うわけですが、それに対して主人は「友よ、わたしはあなたに何も不正なことはしていない」と言われます。
私たちは、「1日じゅう」働いている人の方が当然多く貰えると考えてしまいます。しかし、ここで大切なことは、イエス様が「天の国は次のことに似ている」と言われたことです。イザヤ書には「まことに、わたしの思いはお前たちの思いではなく、……わたしの思いはお前たちの思いより高い」(イザヤ55・8〜9)とありますように、おん父は、私たちが「常識」と考えている以上の【寛大さ】と【アガペの愛】をお持ちなのです。
最初に雇われた者たちは「1日じゅう労苦と暑さを辛抱したわたしたちと同じように扱われる」と不平を言います。彼らにとっておん父との【共働】は、「労苦」と「辛抱」だったのです。それに対して最後に雇われた人は、働く時間より「1日じゅう暑い中働くことができずに、不安を抱きながら立っていた自分たちを雇って、主人と一緒に働くことができた」ことへの感謝を感じたことでしょう。
パウロは「わたしにとって生きるということはキリストであり、死ぬことは、まさに、益をもたらすものです」(フィリピ1・21)と言っています。パウロは、イエス様と共に生きる(働く)ことを生活の中心に置いていたのです。
私たちは、日々の生活の中にあっても、【天の国】でキリストと共に生き、働いています。私たちは、おん父から呼ばれたことに感謝して天のぶどう園で【働く】ことができたらいいですね。