交わりの儀(コムニオ)
引き続き、日本語の新しいミサの式文について話をします。今回は、主の祈りから始まる「交わりの儀(コムニオ)」の中のおもな変更箇所を見ることにしましょう。この箇所が神との、そしてわたしたち相互の「交わり」、「平和」、「一致」を記念することを明らかにするために、「コムニオ」というラテン語が併記されました。
細かな変更箇所はいくつかありますが、ここでは2つの大きな変更箇所について説明します。一つは、主の祈りとそれに続く祈りの後に唱えられる「教会に平和を願う祈り」です。最後の部分がこれまでの日本語式文では唱えられていなかったので、ラテン語規範版に従って唱えられるようになりました。「あなたはまことのいのち、すべてを導かれる神、世々とこしえに」。洗礼をとおしてキリスト者には、そして教会には、キリストの死と復活による平和が与えられたはずですが、わたしたちは弱さ、罪のためにこの「平和」を生きることができていません。だから、聖体拝領の前に改めて「教会に平和と一致」を願うとともに、その与え主である神をたたえて結ぶのです。
聖体拝領前の祈りも変更されました。司祭の呼びかけは、これまで「神の小羊の食卓に招かれた者は幸い」でしたが、ラテン語規範版に従って、「世の罪を取り除く神の小羊」が加えられ、「世の罪を取り除く神の小羊。神の小羊の食卓に招かれた人は幸い」となりました。
会衆の答えも、ラテン語規範版に従って、マタイ8・8の百人隊長のことばに基づく式文、「主よ、わたしはあなたをお迎えにふさわしい者ではありません。おことばをいただくだけで救われます」に変更されました。ただし、これまで日本語の式文で用いられてきた、ヨハネ6・68のペトロの信仰宣言に基づくことばを使用してもよいことになりました。「主よ、あなたは神の子キリスト、永遠のいのちの糧、あなたをおいてだれのところに行きましょう」。規範版を重んじるとともに、これまで唱えられてきた式文の豊かさを考慮して、両方の式文が採用されたのでしょう。
とはいえ、共同体で唱えるのですから、どちらを唱えるかは明確にしておく必要があります。それぞれの式文の豊かさがあります。新しい式文に慣れていく中で、式文の意味を味わい、そのうえでどちらの式文を採用するか考えることのできる共同体へと成長できればと思います。