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月刊澤田神父

「月刊 澤田神父」2022年12月号(新しい「ミサの式次第」第2回)※字幕付き

日本語での新しい「ミサの式次第」の実施
 2022年11月27日、待降節第1主日から、新しく改訂された日本語のミサの式次第が使用されています。最初は混乱があったように思いますが、少しずつ新しい式文に慣れてきたように感じます。わたしたち修道者の場合は、週日も毎日ミサをおこなっていますので、わたしが住んでいる修道院でもほとんど間違えることなくミサをおこなうことができるようになってきたと思います。
 もちろん、単に新しい式文を唱えるだけでなく、変更箇所をとおしてミサの各部分の意味を深めることにしたいです。

「いつくしみ」という表現への統一
 今回の変更では、「あわれみ」という表現が「いつくしみ」という表現に統一されました。例えば、「あわれみの賛歌」は「いつくしみの賛歌」とされました。「いつくしみ」という表現への統一は、日本の教会ではすでに実施されてきたことです。復活節第二主日の「神のいつくしみの主日」や、第二バチカン公会議閉幕50周年を記念しておこなわれた「いつくしみの特別聖年」などに表れています。「神の愛」を表すうえで、日本語の「あわれみ」は「哀れ」、「悲しみ」などを示唆するからなのでしょうか。
 しかしながら、ラテン語の「misericordia」は「miser」(=哀れな)から来るものです。「いつくしみ」と訳すべきか「あわれみ」と訳すべきかは、議論が尽きないでしょう。前述の「いつくしみの特別聖年」が終わるときに発表された教皇フランシスコの使徒的書簡は、聖アウグスチヌスの言葉を引用して『あわれみあるかたと、あわれな女』と題されました。原文では、『Misericordia et misera』(直訳:あわれみとあわれな女)です。この同語根の言葉のつながりを表すために、「いつくしみとあわれな女」とは訳すことができなかったのでしょう。しかしながら、この使徒的書簡の本文ではタイトルと異なり、「いつくしみと惨めさ」、「惨めな女といつくしみ」と訳されています。また、日本語訳聖書のほとんどが「あわれみ」、「憐れみ」という訳語を用いています。
 それぞれの人の考えがあるとは思いますが、皆が納得するような結論を出すことはできないのだろうと思います。聖書、教義、典礼など、それぞれの立場で考え方や表現は変わることでしょう。実際に、ミサの典礼の中でも、式文では「いつくしみ」、聖書朗読では「あわれみ」という訳語の違いが生じてしまいます。ミサの式文自体においても、主の祈りに続く祈りでは、「あなたのあわれみに支えられて、罪から解放され」と訳されていて、「いつくしみ」ではなく「あわれみ」という日本語が用いられています。わたしたちにできることは、こうした「違い」を議論すると同時に、原語の持つ豊かさを受けとめ、神の「いつくしみ」、「あわれみ」の神秘の意味を深めていくことなのだろうと思います。最後に付け加えておくと、個人的には「いつくしみ」という訳語に統一するのでなく、状況によって「あわれみ」という訳語を併用するのも考えていいように感じます。第二バチカン公会議後の典礼刷新の歩みが全教会の一致とそれぞれの文化の多様性を両立させていこうとするものであるなら、日本語の訳文の中でも一致と多様性が存在してもいいように思います。

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澤田豊成神父

聖パウロ修道会司祭。1965年、東京都目黒区生まれ。1996年、司祭叙階。教皇庁立グレゴリアン大学神学科修士課程で聖書神学を専攻、神学修士号取得。現在は編集をとおしての宣教に従事。東京カトリック神学院、聖アントニオ神学院講師。

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