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カトリック入門

「カトリック入門」 第88回 井持浦教会【動画で学ぶ】

 もう三十五年前にもなるが、一九八七年八月三十一日の真夜中〇時頃、台風十二号が福江島を襲った。最大瞬間風速が五十m/sの大型台風で、午前四時頃には対馬沖に達した。この台風により、井持浦教会が大きな被害を受け、近くの旧たち立や谷教会は暴風によって倒壊した。また平戸島のほう宝き亀教会のアーケード(柱廊)も台風によって破壊され、さらに平戸島全体の多くの樹木に潮風が当たり、茶褐色に変わってしまった。ついでながら、私の郷里(松浦市)に四つの鶏舎があったが、この台風により三つの鶏舎が倒壊。しゃれ洒落にはならないが、倒壊した影響で鶏をトリ逃がし、あるものはトリつぶ潰され、最後には鶏舎をトリ壊した。
 五島の教会を見て思うが、教会が建てられている場所は、信者たちが住む地域の中間あたりに、また多くの人に目立つよう高台に建てられている。井持浦教会もこれに該当する。そのため、台風が襲来した時には被害を受けやすい。
 福江港から井持浦教会までは約三十六kmあり、車で約五十分の距離にある。今はあちこちにトンネルが掘られ、とても快適に行くことができるが、三十年前は曲がりくねった狭い道を走り、けっこう時間がかかった。それでも海沿いを走ることが多く、途中で海辺の景色を見ながら、のんびり見物するのもけっこう楽しいものであった。私はのどかな旅のほうが好きだ。
 井持浦教会に着き、ちょっと坂を登っていくと、入口の所に両手を広げたイエスのみ心像があり、台座に「いらっしゃい」という文字が目に入る。通常なら「重荷を負って苦労している者は皆、わたしのもとに来なさい。休ませてあげよう」(マタイ11・28)のことばが記されるところだが、型にはまらない出迎えのことばがかえって親近感を覚える。教会はレンガ風のタイル張り。でもよく見ないとタイルとは思えないほどレンガそっくりだ。
 最初の教会は、パリ外国宣教会のペリュー神父によって、一八九五年に五島で最初のレンガ造りの教会として建てられた。当初、両側にアーケード(回廊)を持つ初のロマネスク風聖堂として有名になったが、一九二四年、聖堂の拡張のため、アーケードを取り込んだ大改修が行われた。ところが、一九八七年八月、台風十二号の影響で大きな被害を受け、翌年、レンガ風タイル張りの鉄筋コンクリート造りの教会に改築された。教会の中に入ると正面に木製の十字架、右側に聖ヨセフと幼子イエス像、左側にルルドの聖母像があり、聖堂内はとてもシンプル。飾りが少ない分、素朴な気持ちになり、静かに祈りやすい感じがする。祭壇のほうを見ながら思ったのは、私が小学生の頃、郷里の教会(西木場教会)では、祭壇に向かって右側が女性、左側が男性の席で、御像も右側に聖母像、左側に聖ヨセフ像が置かれていたけれど、井持浦教会は逆なんだなあと思った。とてもさ些さい細なことだけど……。
 また井持浦教会はルルドの聖母に献げられている。一八五八年、ルルドで聖ベルナデッタに聖母が出現したことにちなみ、一八九九年、日本で最初のルルドが教会の隣に造られた。ルルドを造るにあたって、当時の五島列島の司牧責任者であったペリュー神父は、五島全域の信徒たちに呼びかけて、各地の奇石・珍石・美石を持ち寄ってルルドの洞窟を造ることにした。また洞窟の中には、フランスのルルドから取り寄せた聖母像が安置され、聖母が出現なさった場所から湧いた水を取り寄せ、この洞窟の泉に注ぎ入れた。このルルドを目指して巡礼に訪れる方も多い。(『長崎游学』2/長崎文献社参照)
 井持浦教会から車で十分くらいの所に大瀬崎灯台展望台がある。この展望台から灯台までは遊歩道を使って歩いていくことができ、往路(下り道)二十分、復路(登り道)三十分くらいかかり、灯台まで往復するには時間的な余裕が必要だ。この灯台は、福江島の西端にあり、東シナ海に沈む夕陽は絶景。灯台は、イギリス人のR・プラトンによって設計され、一八七九年十二月十五日に初めて点灯された。現在のものは、一九七一年に改築されたもので、光の到達距離は約二十二kmにもおよび、日本屈指の灯台と言われる。この灯台は、映画『悪人』のロケ地としても使われ、「清水祐一(つま妻ぶ夫き木さとし聡)」と「馬込光代(深津絵里)」の逃避行の末に辿り着いた場所としても使われた。巡礼のついでに、足を運んでみるのもよいだろう。
 季節にもよるが、この灯台周辺は渡り鳥が移動していく所でも有名。春になるとツバメやカッコウなどの渡り鳥が中国方面からやってきて、秋になると鳥たちが中国方面へ旅立っていく。野鳥が好きな方は、そのタイミングを計って訪問すると、楽しみが一つ増えるだろう。

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