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ご存知ですか? 8月20日は聖ベルナルド修道院長教会博士の記念日です

 聖ベルナルドの記念日は、8月20日です。ベルナルドは、1091年に、フランスのブルゴーニュ地方にある町ディジョンの近郊で生まれました。幼いころから勉学の才を示していましたが、母親の死を境に勉学から離れ、何をするでもない生活を送るようになりました。しかし、それから数年後の1112年、おそらく幼子イエスの顕現がきっかけとなって、ベルナルドは、シトーにあった修道院に入ります。シトーの修道院は、聖ベネディクトの精神を徹底して生きようとして、1098年に設立されたばかりの修道院です(1118年に独自の会則が認められ、シトー会と呼ばれるようになります)。ここで、ベルナルドは厳格な修道生活を送るようになります。

 ところが、その3年後の1115年に、当時の修道院長は、ベルナルドを新たな修道院の設立のためにクレルヴォーに送ります。ベルナルドは、司祭に叙階され、修道院長として祝別されます。これ以後、1153年に亡くなるまで、クレルヴォーの修道院長としての務めを果たし続けます。

 シトー会の目指した生活は、それまでの修道生活と比べて厳しいものでしたが、ベルナルドをはじめとする多くの人々の模範もあって、急速に成長していきました。ベルナルドが亡くなったとき、クレルヴォーの修道院には700人以上の修道者が生活していましたし、クレルヴォーから分かれて設立された修道院の数は68に上っていました。

 さて、クレルヴォーに移ってしばらくすると、ベルナルドの名声は、ヨーロッパ中に広まっていき、他の修道者、司教、そして王侯貴族に至るまでが、その指導を求めるようになります。ベルナルドは、おもに手紙のやりとりを通じてこうした要望にこたえていましたが、必要に応じて現地に赴くこともありました。特に、1130年の教皇ホノリウス2世の死によって生じたローマの教会の分裂(2人の教皇の選出・即位)に際しては、ベルナルドはこの問題の重大さを見てとり、可能なかぎりローマに滞在して、問題の解決に尽力しました。

 1135年以降、ベルナルドは「雅歌」についての説教を始めます。この説教は、彼の死まで継続されました。その中で、ベルナルドは神の愛の豊かさについて強調し、この愛が人間の奥底に秘められた最大の渇望を満たすために受肉したこと、またキリストの十字架にこそこの愛は最高の形で現れていることを説きました。

 ベルナルドは、1153年8月20日に亡くなります。ベルナルドの死後、すぐに列聖運動が起き(伝記はすでに彼の生前から書き始められていました)、1174年にベルナルドの列聖が宣言されました。

 聖ベルナルド修道院長教会博士を荘厳に祝う際には、ヨハネ福音書17・20-26が朗読されます。これは、イエスが最後の食事を弟子たちとともにした後、御父に向けてとなえた祈りの一部です。

 ここでイエスは、特に人々を一致させてくださるよう御父に祈っています。「すべての人を一つにしてください」(17・21)。この「すべての人」が厳密に何を表しているのかははっきりしません。もちろん、「全人類」と解釈することも可能でしょう。しかし、文脈上は、「彼ら(=弟子たち)のためだけでなく、彼らの言葉によってわたしを信じる人々のためにも、お願いします」(17・20)と、祈りの対象が広げられ、その後に「すべての人を一つにしてください」と言われています。ですから、「すべての人」とは、「イエス・キリストを信じるようになる人々のすべて」と考えるのが自然なように思われます。

 いずれにせよ、一致は神からの賜物として、だから神に願い求めるものとしてとらえられています。それは、ここで求められている一致が、単なる人間的一致ではなく、三位一体の神の一致に比せられるもの、つまり「あなたがわたしの内におられ、わたしがあなたの内にいるように」(17・21)実現される一致だからです。御父と御子の深い内的な一致は、人間の力で実現できるものではありません。人間の一致は、御父と御子の一致の中に深く巻き込まれて実現するものです。「彼らもわたしたちの内にいるようにしてください」(17・21)。しかし、だかこそ、それは完全な一致となります。「わたしが彼らの内におり、あなたがわたしの内におられるのは、彼らが完全に一つになるためです」(17・23)。

 そして、この一致は、御父のもとから御子が派遣されて、わたしたちのもとに来られたこと(17・21、23)、そしてこの御子がわたしたちとともにおられ(17・24)、神からの栄光を現されたことにより(17・22、24)、実現します。

 また、この一致は、愛という言葉でも言い換えられています。「あなたが……わたしを愛しておられたように、彼らをも愛しておられたことを、世が知るようになります」(17・23)。「わたしに対するあなたの愛が彼らの内にあり、わたしも彼らの内にいるようになるためです」(17・26)。

 父である神は、独り子イエス・キリストを愛しておられるその愛でもって、わたしたちを愛してくださいます。そして、この愛は、イエス・キリストのこの世への派遣によって、わたしたちにもたらされます。キリストがわたしたちとともにいてくださること、霊をとおしてわたしたちと結ばれていることは、神の愛がわたしたちの中にあることの保証です。わたしたちは、この御父と御子の愛における一致に深く結びつけられています。だから、わたしたちも愛における一致を実現できるのです。

 しかし、同時にこの一致は、人間の弱さやさまざまな問題によって常に危機にさらされています。その中で、わたしたちは、まるで分裂をもたらす現実の力のほうが、御父と御子が結びつけてくださる一致の力よりも大きいかのように感じてしまうのです。イエスが、受難と死を前にして、弟子たちの一致を御父に祈ったのはそのためなのでしょう。すべてを無に帰してしまうように思える出来事の中にあっても、父である神が弟子たちの一致を実現し続けてくださるように祈ったのです。

 聖ベルナルドは、さまざまな問題の中で教会の一致のために戦った人です。しかし、彼は決して力をもって一致を強制するのではなく、神の愛の力への信頼と忍耐をもって人々にはたらきかけました。神の愛が必ず人々の心の奥底に届き、一致への力を生み出すことを信じていたのです。わたしたちの時代もさまざまな面で一致が危機にさらされています。神が結びつけてくださる一致の力に信頼して、わたしたちも真の一致の実現のために尽力したいと思います。

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澤田豊成神父

聖パウロ修道会司祭。1965年、東京都目黒区生まれ。1996年、司祭叙階。教皇庁立グレゴリアン大学神学科修士課程で聖書神学を専攻、神学修士号取得。現在は編集をとおしての宣教に従事。東京カトリック神学院、聖アントニオ神学院講師。

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