日本で牛や鶏は馴染みがあっても、羊や狼となるとそんなに見ることができません。羊なら北海道やニュージーランド、アイルランド、スコットランドなど、狼なら動物園に行かないと見ることができないのではないでしょうか。
羊はとても警戒心が強く、近くに寄っただけですぐに逃げてしまうような動物です。人間の視点からすれば、羊は小心な動物。それに対して狼は「凶悪で無慈悲」と漢和辞典には記されています。漢字で単純に考えるとケモノヘンに「良」。つまり「良いケモノ」となり、意外な表現です。ラテン語のことわざには「Lupus in fabula」(「おしゃべりの最中に現れるオオカミ」という表現があり、「うわさをすれば影とやら」という興味深い意味です。
さてイエスは72人を派遣するにあたり、「狼の群れに小羊を送り込むようなものだ」(ルカ10・3)と語ります。単純に考えても、羊ではとても勝ち目のないものです。無駄に見えるかもしれませんが、宣教のためにはそれだけの犠牲が要求されます。
日本の教会でペトロ岐部と187殉教者が列福されました。ペトロ岐部の歩みは、波乱に満ちた人生でした。彼は司祭を目指して勉強しますが、叙階の許可がおりず、マカオ、さらにはインドと旅し、最後にはローマを目指します。ローマでやっと司祭に叙階され、その後、日本での宣教を考えて帰国します。帰国してもすぐに殉教するという覚悟をもって……。帰国にあたり、船が難破すること4回。当時の日本は迫害期の最中でしたが、それでも熱心に信仰を伝えていきます。ペトロ岐部が迫害期に日本に戻るのは無駄なように思えますが、日本の信者のことを考えた勇気ある決断でした。
今の時代、日本で宣教することは無駄に見えるかもしれませんが、イエスの宣教意欲やペトロ岐部の勇気に学びながら積極的に取り組んでいきたいものです。