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最初の宣教師たち

留置所――日本と韓国の聖パウロ修道会最初の宣教師たち(36)

 数日後、パウロ神父が王子で、パガニーニ神父が四谷で同時に逮捕され、留置所に入れられた。私たちは警察から疑われ、警戒されるようなことは何もしていなかった。早朝、数人の私服警官が家の玄関に現れ、パガニーニ神父に質問した。彼らがパガニーニ神父と友好的な話をするつもりがないことはすぐに分かった。彼らは神父を尋問し、所持品を調べ、そして数時間後(私たちには永遠のように感じられた)、彼らはパガニーニ神父を連れ去り、麹町警察署に連行した。後ほど私たちはパウロ神父も王子で逮捕され、私たちの家からほど近い四谷警察署に連れて行かれたことを知った。私たちはショックを受け、茫然としていた。二人の逮捕理由を知ることも、考えつくこともできなかった。あえて言えば、それは私たちからすればバカげたことではあったが、何かのスパイ容疑ではないかと思われた。とにかく当時の状況下にあっては、いつも何かを疑っていた警察が警戒するというのは当然なことであったのだ。

 それは逮捕された二人の司祭にとっても、家に残された共同体の者たちにとっても、暗い日々であった。私たちは何のことか分からず、二人についても、私たちについても、もっと悪いことが起こらないかと本当に不安であった。ずっと後になって知ったのは、逮捕命令はわれわれ全員に対してであったこと、しかし警察(外国人を監視する特別の部門「特高=特別高等警察」)は、今回も陸軍憲兵による介入があったが、性急な行動を避けるために、逮捕者は二人に限ったとのことであった。警察による逮捕、それは私たちにとって「不幸中の幸い」と呼ぶべきでものであった。と言うのは、警察は逮捕者を丁重とまでは言わないものの、ある程度の寛容さをもって扱っていたからである。だが、憲兵隊の逮捕者への取り扱いはそれと全く違っていた。事実、何の責任もないと分かったのでパガニーニ神父は二週間後に釈放された。パウロ神父はもっと時間がかかったが、警察は私たちのうちの一人が毎日食事を差し入れる許可を与えた。その仕事はテスティ神父に任せられた。彼が選ばれた理由は、日本に来てまだ間がないため、疑いを持たれることがなかったからである。

 テスティ神父は毎日、賄いさんが心を込めて作ってくれた粗末な食べ物の包みを持って、警察に指示された道を通って、パウロ神父が拘留されている警察署に通った。このようにして私たち共同体は、「いつもパウロ神父の身近にいるのだ」という思いを持ち続け、差し入れの許可が与えられたことを、「よい兆候だ」と考えた。テスティ神父は時々、拘留されているパウロ神父の様子を知ることができ、その様子を私たちに伝えてくれたので、私たちは彼の状況がどんなものかを想像しようとしていた。

 一度、私たちにもパウロ神父を見舞う許可が下りた。もちろん警官の立ち会いのもとで、「話は日本語だけで」という条件付きであったが。実際、大した内容の会話ではなかった。パウロ神父は眼鏡をかけておらず、髪もひげも伸びてやせて青白く、つらそうに見えた。

 私たちは何を言ってよいのか分からなかった。軽率に何かの問題に触れて彼や自分たちを不用意な危険にさらすことを恐れていた。要するにごくありきたりの、わずかな言葉のやりとり、それすらも気詰まりな沈黙によってしばしば中断された。パウロ神父の寂しそうな声のせいもあり、私たちは疲れて苦しそうな様子の彼を元気づけることができず、冗談を言って場の雰囲気を明るくしようとする試みも失敗に終わった。

 結局その面会は私たちにとって、少しの安心も希望も与えてくれなかった。その時私はなぜか、パウロ神父が(彼はその理由を言わなかったが)、もっと悪い状態、最悪の結果を想定しているかのように思われた。私たちは重苦しい心と、釈放にはまだほど遠いという印象を持って修道院に戻った。
しかし、神の思し召しどおり、この「嵐」も過ぎ去った。パウロ神父は何とか無事な姿で帰宅し、数日後、私たちは唯一の使徒職となっていた「カトリック・プレスセンター」での仕事を再開した。

 王子の小教区教会はパウロ神父の逮捕とともに、決定的に閉鎖された。(戦後、聖パウロ修道会の会員たちが日本において最初の宣教活動を始めた場所とは別の地域に、他の修道会によって新しい小教区教会が設立された〔現在のカトリック赤羽教会〕)。

 やがて、過ぎ去った日々のうちでも最悪の日が刻々と近づいてきていた。それは私たちの「離散の日」であった。戦争は日本にとって、まさしく最悪の事態となって進んでいた。かつて「勝利に次ぐ勝利」を重ねて勇ましく進軍していた日本軍は、今、その占領地からとても整然とは言えないような姿で撤退、退却を余儀なくされていた。

ロレンツォ・バッティスタ・ベルテロ著『日本と韓国の聖パウロ修道会最初の宣教師たち』2020年

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