ここで古代教会の教父たちの聖書解釈論を見てみたいと思います。東西の、つまりギリシアとラテンの代表的な二人の人物が聖書解釈論を著しています。オリゲネスとアウグスティヌスです。オリゲネス『諸原理について』(De principiis)の第四巻で、アウグスティヌス『キリスト教の教え』(De doctrina Christiana)でそれを論じています。アウグスティヌスのこの作品は397年に第1巻から第3巻25章まで書きあげられ、427年に第3巻の残りから第4巻が書きあげられた。これについては次のように論評されています。
「実用的な注解のための方法論を提示する。4巻のうち第1巻は、教えの主題として聖書から挙げられる「条項」(res)を扱っている。すなわち三位一体の神、キリストと教会、神の愛と隣人愛である。第2巻は「しるし」(segnum)を扱っている。ここで考えられているのは、一方では言葉と概念、他方では比喩的解釈方法のための象徴である。世俗的な学問の効用に関する付論でこの巻は締めくくられる。第3巻は首尾一貫して象徴の発見、すなわち聖書の問題となる単語が本来何を意味していたのか確定する作業に取り組んでいる。第4巻は最後に1つの説教学を提示する。」(『キリスト教教父辞典』教文館)p.19
「アウグスティヌスによると、聖書の言葉、表現、文章を解釈するさいに、この楽しみの対象である事柄が大切である。この事柄は聖書の中心的事柄であるからである。したがって聖書はこの事柄に即して解釈されるべきである。これをアウグスティヌスは「信仰の規則」(regula fidei)と呼ぶ。」(宮谷宣史『アウグスティヌス』人類の知的遺産15、講談社p.173)