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キリスト教知恵袋

ルカとルカ福音書について

 一般的に、ルカは「パウロの弟子で医者」だったと考えられています。このイメージはルカについて記した、複数の書物から生み出されたものです。

 年代順に並べてみると、まず、新約聖書ではパウロの書簡・フィレモンへの手紙24節です。「わたしの協力者たち、マルコ、アリスタルコ、デマス、ルカからもよろしくとのことです。」この書簡は西暦53年頃、パウロによって書かれています。つぎにパウロの名によって書かれたコロサイの信徒への手紙4章14節です。「愛する医者ルカとデマスも、あなた方によろしくと言っています。」この手紙は西暦80年代頃に書かれたと考えられています。ここではすでにルカが医者であり、パウロの同行者であることが記されています。更にテモテへの第二の手紙・4章11節です。「ルカだけがわたしのところにいます。」この手紙は、西暦130年頃に記されたと言われますが、ここでもルカがパウロの同行者であることが記されています。

 以上三箇所に記されているルカが同一人物かどうかは断定できません。たまたま名前が同じだっただけかもしれません。しかし一般的には、これらのルカはみな同一人物であるとみなされました。こうして私たちになじみのある『ルカによる福音書』と『使徒言行録』の著者のイメージが形作られたのです。

 この後の書物からも、「医者であり、パウロの同行者であるルカ」というイメージが定着していたことが伺えます。たとえば、西暦180年代には、エイレナイオスが「パウロの同行者ルカも、パウロが教えた福音を書物にした」と記述していたことが、5世紀の司教エウゼビオスの『教会史』第5巻8—3に記されています。また、西暦200年頃ローマで記されたと考えられる『ムラトリ正典目録』には、「医者ルカは、……パウロに伴われたゆえに、パウロの考えに従って、福音書を書いた。」と記されています。

 最後に、ルカ自身が書き残した言葉に注目します。「わたしたちの間で実現した事柄について、最初から目撃して御言葉のために働いた人々がわたしたちに伝えたとおりに、物語を書き連ねようと、多くの人々が既に手を着けています。」(ルカによる福音書1章1〜2節)ここからは、ルカが直接イエス様に出会った世代ではなく、のちの世代に属していること、また、彼が洗練されたギリシア語を書く文化人であったことが読み取れます。

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