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キリスト教知恵袋

新約聖書の並び順について

 どの文書が新約聖書に属するのかという問いは、古代教会において、長い時間をかけて議論されました。今日、私たちが聖書として認めている二十七文書だけが新約聖書であると最初に言った人は、アレキサンドリアの司教聖アタナシオで、三六七年のことでした。しかも、彼が並べて見せたその順は、今の私たちの並べ順とはかなり異なっているのです。

 古代教会において、新約聖書の文書の並び順は、長い間流動的でした。現在の並び順を最初に書き記したのはナジアンズの聖グレゴリオで、やはり紀元四世紀のことです。彼の並べ順は、歴史の中で少しずつ生み出されたものです。ですから、厳密な基準に基づいて並べられたものではなく、ゆるやかないくつかの基準に基づいて並べられたものだと言えます。

 たとえば、「四つの福音書」「使徒言行録」「二十一の手紙」「黙示録」という並び順は、新約聖書の二十七書がジャンル別に分けられて並べられているということ、しかも、「四つの福音書」が最初に置かれていることから、最も重要な文書を最初に置くという基準が適用されていることが分かります。

 「使徒言行録」が次に置かれているのは、その内容について、時間的な順序を尊重した結果と言えるでしょう。時間的な順序を考慮するなら、「なぜマタイ福音書が最初に置かれていて、マルコ福音書が次に来るのか?」という問いが生じます。確かに、最初に書かれたのはマルコ福音書です。しかし、古代教会において、たとえルカ福音書が四福音書の最初に置かれることはあっても、マルコ福音書が最初に置かれることはありませんでした。当時の人びとにとって、マルコ福音書は物足りなかったのです。彼らは、自分たちが最も重要視したマタイ福音書を、一番目に置いたのでした。

 パウロの手紙の並び順も、それぞれの手紙の重要さが決め手になっているようです。「ローマの信徒への手紙」を先頭にして、いわゆる四大書簡が、ずらりと並べられているのはそのためです。

 新約聖書の並び順は、厳密な基準のもとに、短期間で決められたものではなく、緩やかな複数の基準に基づいて、長い過程を経て形成されていった結果であることがわかります。

・回答者=鈴木信一神父

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