「お生まれになったユダヤ人の王は、どこにおられますか」（マタ２・２）と、東方の博士たちがエルサレムで尋ねることから、今日の福音が始まっていきます。救い主を待ちに待っていたユダヤ人ではなく、異教徒の博士たちがイエスの誕生を知っていることに対して、ヘロデ王はとても驚いたことでしょう。自分たちを差し置いて、なぜだろうかと…。
ヘロデ王にしてみれば、「ユダヤ人の王は、どこにおられますか」という問いに対して、とても複雑な気持ちにさらされていきます。自分が王なのに、どうして彼らは「ユダヤ人の王」という表現を使うのだろうかと…。ヘロデ王は「王」のイメージを政治的、支配的な姿として考えていましたので、自分の立場が危ぶまれると思ったのは確かです。「救い主としての王」ではなく、「支配的な王」のイメージを持っています。その意味でもキリストの到来は、彼にとって、とても驚異のまとであり、不安な材料となりました。しかも、ユダヤ人よりも異教徒の方が、キリストの到来に気づいていることについても…。
同様かもしれませんが、神学のことを深く勉強し、救済論などを教えながらも、イエス・キリストがだれであるかをしっかりとつかんでいるか否か…。心の中については、人間のレベルでは到底はかりしれないものです。また修道院で長いこと生活していながらも、心では神様から離れてしまったような生活をしていることがあるかもしれません。慣れというものは、恐ろしいものです。
大切な宝が信仰者に隠され、キリストのことを全く知らない異邦人に示されていくところに、今日のみことばの不思議さがあります。ミサや聖体訪問などにおいて、聖体やみことばに触れ、キリストに出会う機会をたくさんいただいています。私たちはどの程度キリストの到来に気づいているのでしょうか…。
