序)預言者とは?
一般に魔術や占いをし、神の託宣を受けるに適しているとみなされている人を指したりする。また何か重大な仕事を行うとき、彼らの意見が求められたりする。
ヘブライ語では「ナービー」が使われ、「呼ばれたもの」の意味があり、「先見者」「神の人」の意味を持つ。
ギリシア語では「プロフェーテス」が使われ、「神の代弁者」の意味を持つ。
1)前の預言者(ヨシュア、士師、サムエル、列王の各文書の内容が示す預言者像)
アブラハムは神の約束を信じてゆるぎない人だった。(創世記15・4~7)こうして神との対話の中で、アブラハムは自分の将来を人間的可能性ではなく、神の約束に託していた。こうした神への無条件な信頼が預言者的信仰の根本である。事実、アブラハムは預言者としてアビメレクのために神にとりなしを行った(創世記20・1~15)。預言者は神との橋渡し。
モーセは預言者というよりも「主の僕」「神の人」と呼ばれる。
「主の僕」の称号を与えられるのは、イスラエルの王「ダビデ」である。預言者ナタンが王に告げる神の言葉の中で「僕ダビデ」という言葉を使っている。(サム下7・5)
「神の人」と預言者としては、モーセのほかに預言者エリアがいる。(列下17・18)。この呼び名を受けて、エリアの後継者となったエリシャも「神の人」と呼ばれている。エリシャが目立っていることは、彼の周囲にかなりの数の預言者の集団がいたこと、そしてこの預言者団が、イエスらえるにバアル宗教を導入したオムリの王朝を滅ぼして、イエフの革命の成功のために積極的に参加したことである。
アブラハムからエリシャに至る預言者たちは、行動と存在による預言者であった。
2)後の預言者(イザヤ、エレミヤ、エゼキエル、12小預言者)
三大預言者は、イザヤ、エレミヤ、エゼキエル
イザヤ書は、三つの大きな歴史的区分がなされている。
紀元前8世紀後半にエルサレムで活動した預言者イザヤ(1~39章)
バビロン捕囚からの帰還の途上に語られた「第二イザヤ」の預言(40~55章)
56~66章のユダヤ帰還後の紀元前500年以降に活動した無名の預言者で、「第三イザヤ」と呼ばれる人物の預言が合体されて1巻の書とされている。
*三大預言者の特徴
①イザヤ
罪の自覚を呼び覚ます(イザ6・5)
常に使命の遂行へと導くが、そのとき道具となるものは、神の言葉を告げる彼らの口である。
②エレミヤ
母の胎内ですでに預言職に聖別された人。(エレ1・5)
神の召命は、エレミヤには弱さの自覚を(エレ1・6)
主のそそのかしのままに語る(エレ20・7~9)
③エゼキエル
神の手が自分の上に強くのしかかるのを感じる。(エゼ3・14)
*小預言者の特徴
①アモス
預言としては最古のものであり、内容も典型的な優れた預言の文体。彼の激しく厳しい神の審判の預言は、聴くものを大きな恐れに導く。
3)新約における預言者
イエスの生涯が、旧約の預言を成就する。
エマオの旅人たちの場面(ルカ24・25)、モーセとすべての預言者(ルカ24・27)。
旧約聖書全体が預言的な書き物。
洗礼者ヨハネは、全預言者の代表としてイエスについて証言する。
新約の預言者たちも、その務めは未来について予告することだけではない。「預言をする者は、徳を高め、勧めをなし、慰めを与えるために話す」(一コリ14・3)